「面貸し」という言葉を、セラピストの方から聞くことはほとんどありません。
これは美容師さんの世界の言葉で、同じ「場所を借りて働く」でも、エステ・整体・鍼灸の世界では「レンタルサロン」「シェアサロン」と呼ばれています。
ただ、呼び方が違うだけかというと、そうではありません。根拠になる法律が違います。
この記事では、面貸しとレンタルサロンで何が変わるのかを、美容師法の条文にあたって整理します。
面貸しとは何か
面貸しは、美容室が自分の店の座席(セット面)を、外部の美容師に貸す形態です。
「面」は鏡の前の席のこと。1席だけ貸すところから来た言葉で、ミラーレンタルとも呼ばれます。
借りる側は自分でお客様を集め、自分の料金で施術し、売上は自分のものになります。その代わり、席を借りる料金を店に払います。
業務委託との違いは「誰が集客するか」
面貸しと混同されやすいのが業務委託です。違いは集客の担い手にあります。
- 面貸し:自分で集めたお客様を施術する。店には席の利用料を払う
- 業務委託:店が集めたお客様を施術する。その分、店に払う割合は高くなる
集客を自分で背負う代わりに手取りが増えるのが面貸し、集客を店に任せる代わりに取り分が減るのが業務委託、という関係です。
料金体系は3種類
面貸しの料金は、月額制・時間制・歩合制のいずれかが一般的です。月額なら5万〜20万円程度、時間制なら1時間2,000円前後、歩合制なら売上の30〜50%が目安とされています。
歩合制は「売れなければ払わなくていい」ように見えますが、売れたときの負担は重くなります。月額制はその逆で、稼働が読めるなら有利ですが、休んだ月も出ていきます。
ここからが本題:法律の枠組みが違う
面貸しとレンタルサロンの一番大きな違いは、料金でも呼び方でもありません。美容師法という法律が関わるかどうかです。
法律上の「美容」は範囲が決まっている
美容師法第2条は、こう定めています。
この法律で「美容」とは、パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。
そして第7条で、こう続きます。
美容師は、美容所以外の場所において、美容の業をしてはならない。
つまり美容師が美容の仕事をする場所は、「美容所」でなければならないということです。
決まるのは「場所の呼び名」ではなく「誰が何をするか」
ここで誤解されやすいのが、「面貸しだから美容所が要る」という理解です。そうではありません。要否を決めるのは、借りた人がそこで何をするかです。
- カット・パーマ・カラー:美容師免許が必要。場所は美容所でなければならない
- まつげエクステ:厚生労働省の通知(平成20年3月7日 健衛発第0307001号)で美容師法の「美容」に該当するとされています。まつ毛エクステンションの危害(厚生労働省)。美容師免許が必要で、場所も美容所であることが求められます
- ネイル:美容師免許は不要とされており、独立したネイルサロンであれば美容所の届出も不要です
同じ「席を借りて働く」でも、施術の内容で適用される法律が変わります。面貸しという言葉そのものに、法的な意味があるわけではありません。
なお、美容所として届け出た場所では、逆に制約が生まれる場合があります。美容所内で客の身体に触れる施術ができるのは美容師に限られる、という運用をとる自治体があり、その場合ネイリストが美容室の席を借りても施術できないことになります。この扱いは自治体の条例や保健所の運用によって差があるため、借りる前に所轄の保健所へ確認してください。
美容所には知事への届出が要る
同法第11条です。
美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、第十二条の三第一項に規定する管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
さらに第12条では、構造設備について知事の検査を受け、確認を受けた後でなければ使用してはならないと定められています。
ここが面貸しで最も注意が要る部分です。誰が「開設者」なのかによって、届出の要否が変わります。借りる美容師が独立した事業者として営業するなら、その形態によっては借りる側にも届出が必要になることがあります。判断は保健所の管轄なので、面貸しを始める前に必ず所轄の保健所へ確認してください。
エステ・整体・鍼灸は「美容」に当たらない
一方で、条文をもう一度読んでみてください。「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」。
エステティック、整体、鍼灸、リラクゼーション、カウンセリング。これらは美容師法が定める「美容」の定義には当てはまりません。そのため、美容所の届出という枠組みの外にあります。
レンタルサロンが時間貸しという柔軟な形をとれるのは、この違いが背景にあります。美容師の面貸しが月額契約に寄りやすいのに対し、レンタルサロンが1時間単位で借りられるのは、単に商習慣の違いではないということです。
ただし、あん摩マツサージ指圧師・はり師・きゆう師など、それぞれの業に別の法律が関わる場合があります。「美容師法の対象外=何の届出も要らない」という意味ではありません。ご自身の施術内容がどの法律に関わるかは、開業前に確認しておいてください。
どちらを選ぶか
ご自身が美容師免許を使って仕事をするなら、選択肢は面貸しになります。美容所として届け出られた場所でしか働けないからです。
エステ・整体・鍼灸・リラクゼーションであれば、レンタルサロンが選べます。このとき効いてくるのが、時間単位で借りられることの意味です。
時間貸しは「休んでも払わない」を選べる
月額制の面貸しは、稼働の有無にかかわらず費用が発生します。体調を崩した月も、家庭の事情で予約を減らした月も同じです。
時間貸しなら、使った時間だけの支払いで済みます。週1日から始めて、手応えが出てから増やすという進め方ができます。固定費を持たずに始められることは、続けられるかどうかに直結します。
掛け持ちができるか確認する
面貸しでもレンタルサロンでも、他の場所との掛け持ちを認めるかどうかは運営側の方針によります。
ピエリスでは、他のレンタルサロンや自宅サロンとの掛け持ちでのご利用を歓迎しています。
エリアによってお客様の層は変わりますから、複数の場所を使い分けることは、むしろ自然なことだと考えています。
まとめ
面貸しとレンタルサロンは、似ているようで前提が違います。
- 面貸しは美容師の世界の言葉。ただし法律の要否を決めるのは言葉ではなく、借りた人がそこで何をするか
- カット・パーマ・まつげエクステは美容師免許と美容所が必要。ネイルは不要
- エステ・整体・鍼灸は美容師法の「美容」に当たらない。だから枠組みが違う
- 料金の形も違う。面貸しは月額・歩合が多く、レンタルサロンは時間貸しが選べる
- ただし「届出が一切要らない」わけではない。施術内容ごとに関わる法律は別途確認が必要
もし美容師の方がこの記事にたどり着いていたら、ピエリスは美容所の届出をしていないため、美容の業(パーマ・カット・カラー等)にはお使いいただけません。
エステ・整体・鍼灸・リラクゼーションなどでお探しでしたら、1時間単位でご利用いただけます。まずは見学からご相談ください。
※ 法令の引用は e-Gov 法令検索で原文を確認したものです(2026年8月時点)。実際の届出の要否は個別の事情によって変わりますので、所轄の保健所にご確認ください。